タイヤの性能 いいタイヤとは

タイヤの性能 いいタイヤとは

 

みなさんが思う、いいタイヤとはどんなものですか?

 

タイヤは、車と外界をつなぐ唯一のパーツです。私が個人的に思ういいタイヤとは、グリップ力と剛性が高いタイヤです。いざという時にスリップしにくく、スリップしてもコントロールしやすいタイヤがいいと思うからです。

 

でもそれが正解とは限りません。タイヤの性能はグリップ力や剛性だけではないからです。また、グリップ力と一言で言っても、様々なグリップ力があります。


 

タイヤの様々な性能について

 

●グリップ力(ドライ)
タイヤの性能を考えた時、真っ先に思い浮かぶのはこれでしょう。乾燥路面でのグリップ力です。これが最低限ないと、タイヤとしては問題です。

 

進行方向に働く縦グリップ力と、それとは垂直方向に働く横グリップ力があります。(下に紹介している別のグリップ力に関しても同じです)

 

●グリップ力(ウェット)
濡れた路面上でのグリップ力です。廃水性をこのウェットグリップ性能としているメーカーもありますが、厳密には違います。あくまでも濡れた路面でのグリップ力です。

 

●グリップ力(スノー)
雪上でのグリップ力です。

 

●グリップ力(アイス)
氷上でのグリップ力です。

 

●廃水性
タイヤと地面の間にある水を外に吐き出す性能です。この性能が低いと、ハイドロプレーニング(水の上を滑り、操作不能になる)現象が起きやすくなっていしまいます。

 

●静粛性
ロードノイズ(路面の凹凸によるタイヤの振動、またはその振動が伝わった足回りやボディの振動によって、車内に発生する騒音)をどの程度抑えることができるかという性能です。

 

●対摩耗性
タイヤの減りにくさです。車を走らせればタイヤは少しずつ削れていきます。

 

●クッション性
段差を乗り越えた時の、衝撃を和らげる能力です。

 

●剛性
タイヤに負荷がかかった時の、変形のしにくさです。この性能が低いと、ハンドルを切った時の応答性が悪くなったりします。

 

●対荷重
重さにどれだけ耐えられるかという性能です。タイヤに入れる空気圧によって変化しますが、入れられる空気の量も、タイヤの種類(ロードインデックス)によって変わってきます。

 

 

以上が私が考えるタイヤの性能です。

 

もしもこれらの性能が全て高いタイヤがあれば、それが一番いいタイヤということになります。しかし、これらの性能のうち、どれかを高くしようとすると、別の性能が下がってしまいます。

 

 

転がり抵抗とは

タイヤが転がる時に、転がろうとする力を妨げるものが3つあります。

 

空気抵抗 どんなものにも空気抵抗はかかります。動く方向に対しての投影面積が大きいほど、空気抵抗は多くかかります。
地面との摩擦 言いかえればグリップ力です。グリップ力の高いタイヤは、転がり抵抗が大きくなります。
タイヤの変形

同じ大きさで、同じ重さのボールが2つあるとします。1つはやわらかく、もう1つは固いとします。同じ勢いで転がした時、どちらのボールが多く転がるでしょうか。

 

答えは、固いボールです。やわらかいボールは、転がる時に受けたショックを吸収し、熱エネルギーに変換してしまいます。(私が上記に示したタイヤの様々な性能でいうと、剛性に当たります。)

 

このなかで、車のタイヤの転がり抵抗を最も大きくしてしまうが、タイヤの変形によるものなのです。ですので、このタイヤの変形を極力抑えることで、転がり抵抗を減らすことができるというわけです。

 

最近車業界では注目の的になっている燃費に関係することなので、日本のタイヤの規格を定めている日本自動車タイヤ協会JATMAが推進するラベリング制度を導入したタイヤメーカーは、ラベルによってこの転がり抵抗を表示するようになりました。

 

 

JATMAのラベリング

 

 

 

転がり抵抗のマークです。
この右に表示されるAAA、AA、A、B、Cで転がり抵抗の度合いを表します。(AAAが転がり抵抗が少ない)転がり抵抗がC未満のタイヤにラベリングはされません。

 

ウェットブレーキ性能のマークです。
この右に表示される a、b、c、d で、濡れた路面でブレーキした時の制動力を表します。( a が制動力が高い)

 

低燃費タイヤのマークです。
上記、転がり抵抗がA以上(Aを含む)、ウェットブレーキ性能が d 以上( d を含む)タイヤにこのマークが付与されます。

 

 

 

 

 

相反するタイヤの性能

 

実際に売られているタイヤのJATMAのラベリングを見て、よく比較してもわかることなのですが、転がり抵抗とウェットブレーキ性能はどちらかの性能を上げてしまうとどちらかの性能が下がってしまっています。

 

同様にタイヤのドライグリップ力を上げていくと、接地面積の広い、溝のないタイヤになっていきます。溝のないタイヤとは、廃水性が無いタイヤということになります。

 

また、クッション性を良くしていくと、タイヤの剛性がなくなっていきます。タイヤの剛性がなくなってしまうと、ハンドル操作に対する応答性が悪くなっていきます。

 

このように、タイヤの性能には、様々なものがあり、どの性能を重視しているのかがそれぞれ違うので、どの性能を重視したタイヤなのかを見極めて、自分が求める性能が高いものを選ぶことが大切です。

 

 

つまり、いいタイヤというのは人によって違ってくるため、どんなタイヤがいいタイヤだと言うことはできないのです。

 

お客様を乗せて運ぶタクシーであれば、お客様に快適に乗っていただくために、乗り心地を重視したいので、クッション性がいいタイヤがいいかもしれません。

 

しかし、クッション性を良くすれば、タイヤの剛性は低くなってしまい、ハンドル操作に対する応答性が悪くなってしまう傾向になります。

 

安全性を高めようと、グリップ力を重要視したタイヤにすれば、ロードノイズが激しくなってしまうかもしれません。

 

このように、何かの性能を高くしてしまうと、他の性能が落ちてしまうのがタイヤです。いいタイヤとは、重視したい性能、要らない性能をよく考えて選んだタイヤのことであると思います。

 

みなさんは何を重視しますか?タイヤを選ぶときにはこのようなことを考えて選ぶようにしてみてください。