力を逃がさない!密封効果
燃焼室 「シリンダー」 の仕組み
エンジン内にはシリンダーという筒状の部屋があります。
このシリンダーの中にピストンというこれまた筒状の部品があり、シリンダーの中をピストンがスライドするように行ったり来たりすることによって、ピストンにつながっているクランクシャフトという部品を回すことができます。
クランクシャフトから様々な部品を介して最終的にはタイヤを回します。
つまり、ピストンを力強く動かせば、クランクシャフトが力強く回り、タイヤは力強く回ります。
そして、ピストンを何回も動かせば、クランクシャフトが何回も回り、タイヤは何回も回ります。
このピストンを動かすのは燃料を燃やして発生される爆発の力です。爆発の力が強いほど、ピストンは強く押され、タイヤが力強く回されるという訳です。
シリンダーの中でピストンは行ったり来たりるように動きます。行ったり来たりするピストンにつながっているクランクシャフトが、自転車でいうところのペダルのような役割をしていて、ピストンが人間の足のような役割を果たします。
自転車に例えるなら爆発の力は足首から上の部分になります。人が足でペダルを押す代わりに、車は燃料を爆発させてピストンを押します。
そうして力を伝えているピストンですが、このピストンとシリンダーの間には隙間が開いています。全く隙間が無ければ、ピストンがスライドしようとする時にうまくスライドできなくなってしまうからです。
ですが隙間が開いているということは、爆発がその隙間からもれてしまいます。
そこでエンジンオイルでピストンとシリンダーの間の隙間に油膜をはってお互いを摩擦させないようにしつつ、ピストン(正確にはピストンについているピストンリング)とシリンダーの隙間から爆発の力を逃げないようにしているのです。
爆発の力が逃げないということは、ピストンが爆発の力を最大限に受け止め、シリンダー内を移動し、それに合わせてクランクシャフトが最大限に回ります。
もしもエンジンにオイルがなくても摩耗しない作りに出来たとしても、シリンダーとピストンに隙間があれば、爆発の力がエンジン内部の空間に逃げてしまい、ピストンを押す力が弱くなってしまいます。
その結果、最終的にはタイヤを回す力が弱まってしまい、燃費も悪化してしまいます。この爆発の力を逃がさないように隙間を埋めるのが、エンジンオイルの密閉効果です。
金属の膨張と燃焼の関係
ここからは余談ですが、
シリンダーとピストンは、エンジンをかけた時から、連続した爆発の熱にさらされています。エンジンが冷えた状態~暖まった状態までの間には、かなり温度差があります。
金属は暖まると膨張し、冷えると収縮するので、金属でできているシリンダーとピストンの隙間は、エンジンが冷えた状態の時と、暖まった状態の時とでは、大きく違ってきてしまいます。
ここまで話せば気付いた方もいるかもしれませんが、どんなに適切なエンジンオイルにしても、常に密閉効果が得られるわけではありません。
冷えている時の方が金属が収縮しているので、金属間の隙間が大きくなってしまいますので、爆発の力は隙間から漏れます。そんな時に走り始めても、爆発の力を逃がしてしまうので、エンジンが出せる最大の力は得られません。
つまり、エンジンオイルの種類やエンジンの暖まり具合によって、エンジンの出せる力は変わってくるということです。
また、エンジンが暖まっていない時にエンジンの回転数を上げてしまうと、冷えたシリンダーとピストンの隙間から爆発の力が多く逃げてしまうのと同時に、
燃焼時に発生したススや、燃えきらなかった未燃焼ガス、燃焼後の汚れた気体や、燃えきれなかったガソリンが、エンジンオイルに混入し、エンジンオイルの劣化が進んでしまいます。
このことから、密閉効果の得にくい粘度の低いエンジンオイルでは、エンジンオイル自体の劣化も早くなってしまうことがわかります。