エンジン内の部品の損傷を軽減するには

まず、第一に、エンジンオイルを交換することが大事です。どのくらいの頻度で交換すればいいのかは、様々な意見がありますが、車や、運転の仕方、車の走る環境(気候や路面の状況)によって、大きく変わると考えています。

 

どんな使い方をしてる人でも安心してエンジンを壊さずにいられそうなエンジンオイルの交換頻度で言えば、走行距離2500km毎、もしくは3か月毎のどちらか早い方の条件になったら、交換。していればまず大丈夫だと思います。

 

ただし、それではもったいないケースが多いと思います。ですのでまずは、なぜエンジンオイルを交換しなくてはならないのかについて知ってもらいたいと思います。

 

 

 

エンジンオイルに取り込まれる金属粉

エンジンの中では、様々な金属の部品が擦れあって動きます。エンジンオイルがあることで、この擦れ合う金属部品の摩擦を抑えています。

 

また、エンジンオイルは、金属部品が擦れ合って出来てしまった金属粉を、自らの中に取り込みます。

 

エンジンオイルの中に取り込まれた金属粉は、エンジン内をエンジンオイルと共に循環し、研磨剤のような役割で、循環する経路内を研磨してしまいます。

 

そのままではすぐに削られてしまい、故障してしまうため、エンジンには、各部に金属粉をなるべく循環させないための機能があります。

 

大きい金属粉はオイルパンというエンジン最下部にある受け皿のような部分に溜まり、エンジンオイル交換の際に排出されます。

 

この、オイルパンからオイルポンプで吸い上げて、エンジン内各部にオイルを吹き付けていますが、オイルパンに溜まったオイルを吸い上げる際、網目状のストレーナーという部分を通過します。

 

大きな金属粉はこのストレーナーの網目を通過できず、オイルパンの中に残るため、循環できないという訳です。

 

エンジンオイルを交換する際は、オイルを抜いて、入れます。抜く方法は、オイルパンの底に付いているドレンボルトを外すことです。

 

オイルパンのドレンボルトを磁石付きのものにし、外したドレンボルトの汚れを飛ばすと、このような鉄粉が付着することも・・・

 

ストレーナーを通過してしまう小さな金属粉は、オイルエレメント(オイルフィルター)に詰まります。定期的にオイルエレメントを交換することで、オイルエレメントに詰まった金属粉をエンジンから排出します。

 

オイルエレメントを通過してしまうような更に細かい金属粉は、残念ながら、エンジンを稼働させている間、常にエンジンオイルとともに、エンジン内を循環しています。

 

この細かい金属粉が、研磨剤のような役割を果たしてしまい、エンジン内の金属部品を少しずつ削っていきます。

 

ただし、エンジンオイルが多くの細かな金属粉を含んでしまったとしても、いきなり故障してしまうなどといった、大きな問題はありません。

 

しかし、徐々に内部を削ってしまっているということです。

 

早めにエンジンオイルを交換するのは、環境に良くないという意見もありますが、同じ車に長く乗り続けるのであれば、早めにオイルを交換するのは効果的です。

 

もちろん、劣化した消耗部品(点火プラグやタイミングベルトやウォーターポンプなど)をきちんと交換する必要はありますが、早めのオイル交換でエンジンの調子を保っていれば、30万km走行しても、エンジンは壊れません。

 

 

 

金属の膨張率について

金属だけに限った話ではありませんが、温まった金属は膨張するということをご存じでしょうか。

 

エンジンの中では、燃料と空気を混ぜ、圧縮させてから、燃焼させています。エンジンがかかっている間はこれを繰り返していますが、金属の固まりであるエンジンはどうなっていくでしょうか。

 

どんどん温まって、膨張していきます。(温まりすぎるとオーバーヒートしてしまいますから、80℃~100℃ほどになるとラジェーターで冷却してそれ以上温まらないようにはなっています。)

 

もしも、出来立てほやほやの常温のエンジンの精度が抜群にイイとしたら、そのエンジンが暖まった状態での精度はどうでしょうか。

 

精度が悪い。ならまだマシな方で、金属の膨張によって、金属部品間に必要な隙間がなくなってしまい、破損してしまう場合があります。

 

ですので、エンジンは、暖まった時に最適な動きができるように設計されています。逆にいうと、暖まっていないエンジンは、精度が悪く、最適な動きができないのです。

 

最適な動きができないとは、どういうことかというと、スムーズに上下に運動するべき部分が、ガタガタと震えながら上下運動したり、引っ張る時も押すときもガッチリ掴んでいたい部分が、押したい時に一呼吸間が開いたり、引っ張るときに一呼吸おいたりするようになります。

 

このような状態の時には、振動も大きく、ブレやすいので、激しく動かすと、ダメージを受けやすいということです。

 

 

実家のとあるドアの話

 

私の住んでいた実家では、夏になると、あるドアが閉まらなくなるということがありました。このドアを無理に閉めることはできましたが、閉めてしまうと、今度はなかなか開きません。

 

ドアの付け根の金具が膨張し、立て付けが悪くなってしまっていたのです。

 

こうなった場合、ドアの立て付けを直すのが最適な対応だったかもしれませんが、無理に開け閉めしたことによって、ドアのフチが擦れ合って削れ、キズになってしまいました。

 

それでも無理に開け閉めしているうちに、ドアはいつしかスムーズに開け閉めできるようになりましたが、今度は、冬になると、ドアの隙間から風が抜けてしまうようになりました。

 

何度も無理な開け閉めを繰り返しているうちに、ドアの淵と、枠が削れてしまっていました。

 

冬に冷たい隙間風が嫌な時には、マットをドアの隙間に挟んでいました。

 

エンジンの場合、マットを挟んで隙間を埋めるようなことはできません。キズがついて低下した性能は、何かを挟んで取り戻すようなことはできません。

 

とは言ったものの、ほんのわずかなら、エンジンオイルの粘度を上げて、油膜を厚くしてあげれば、隙間を埋めることもできます。ほんのわずかなら、ですよ。

 

 

 

エンジンオイルの粘度によるエンジンの動き方の違い

エンジンオイルには、粘度があります。粘度というのはオイルの固さのことで、ドロッとしているソースのような固いものや、サラっとしている醤油のような軟らかいものがあります。

 

元々のオイルの粘度に違いもありますが、温度の変化によって、同じオイルでも粘度に違いが出てきます。

 

バターはキンキンに冷えていれば固いですが、温めていくと溶けてきますね。溶けたばかりだとまだ少しドロっとしてますが、完全に熱が入るとサラサラになりますよね。

 

バターのように、エンジンオイルも暖まり具合で粘度が変わります。

 

エンジンをかけたばかりだと、まだ冷えているので、オイルは固く、エンジン内で動こうとする部品の抵抗になっています。

 

逆に、エンジンが温まってくると、スムーズに動くための潤滑剤になります。

 

焼いたトーストに冷えたバターをスプーンなどで塗るとき、始めは抵抗が強くてすぐに塗り広げられませんが、バターが温まってとけてくるとトーストの上でスプーンはすぅーっと動き、簡単に塗り広げられるようになりますよね。

 

エンジンオイルも、エンジン内で冷えている間は、動こうとする部品の抵抗になり、振動を伴います。また、温まってくれば、スムーズに動くのを助けます。

 

 

 

停止後のエンジンオイルの状態

 

エンジンを停止してしばらく経つと、エンジンオイルは下へ下へと垂れていきます。
エンジン内各部に必要なオイルの量は不足がちになります。

 

そのような状態でエンジンを始動すると、必要量のオイルが行き渡っていないので、摩耗しやすいのです。

 

これをなるべく軽減させるために、エンジンをかけたら、10秒ほどは発進を控えることをお勧めします。

 

特に、固めのエンジンオイルを入れていると、オイルが行き渡るのにより時間を要しますので、長めに時間をおいたほうがいいと思います。

 

ただ、あまり長く待っていても燃料の無駄ですので、交通の流れが急な道でなければ、ゆっくり発進してしまった方がいいでしょう。

 

急加速しなくてはならないような道であれば、長めに暖機して暖めてもいいと私は思います。

 

 

 

エンジンの損傷を軽減するためには

 

●エンジンオイルは早めに交換する。
金属粉が内部を削るのを防ぐため。

 

●エンジンや、エンジンオイルが暖まるまでの間、アクセル操作はそっと行う。
エンジンが暖まるまでは、精度が悪く、エンジンオイルが暖まるまでは、冷えたバターのように抵抗が大きいから。

 

●しばらく停止したあとは、エンジンをかけて10秒くらいは発進を控える。
下へと垂れたオイルが、必要量のオイルを行きわたらせるため。

 

この3点が、エンジン内の部品の損傷を軽減するために重要です。