エンジンオイルの粘度について

エンジンを保護しているエンジンオイルですが、エンジン内の潤滑が必要な部分に張り付いて、膜をはってくれています。

 

この膜を、「油膜」といいます。

 

油膜がはられていれば、金属の部品であっても、錆びることはありませんが、エンジン内では、金属の部品どうしが激しく回転したり、行ったり来たりして、ぶつかり、こすれあっています。

 

こすれあう部品と部品の間に張られた油膜によって、部品どうしを直接触れさせないようにし、滑らせる役割もあるのですが、その時、油膜の厚みによっては、激しく動くエンジン内の部品の衝突によって、油膜が破られてしまうことがあるので、適切な厚みの油膜が必要になってきます。

 

油膜の厚みは、エンジンオイルの粘度によって違います。

 

● 粘度が低いほどオイルはやわらかく、水のようにサラサラしていて、油膜は薄くなり、

 

● 粘度が高いほどオイルは固く、ソースのようにドロドロしていて、油膜は厚くなります。

 

金属製の部品表面にはられた油膜が厚いほど、部品同士が直接ふれにくいので削れにくくなります。また、その部品同士が激しく接触しようとする衝撃や振動を緩和してくれます。

 

油膜が薄いと、金属の部品が油膜を突き破ってしまい、部品同士が直接接触してしまいます。このことを油膜切れといいます。

 

ここまで聞くと、一見油膜が厚い、粘度の高いオイルの方が良さそうな気がしますが、粘度を高くすればいいというわけではありません。

 

 

粘度を高くすればいいとは限らない

 

油膜切れをおこさないために、油膜を厚くしようとして、粘度の高すぎるオイルを使用すると、今度は抵抗が増えてしまいます。

 

皿の中に入ったさらさらな醤油を混ぜるのと、ドロドロのソースを混ぜるのとでは、必要な力が違いますよね。それと同じように、エンジン内で擦れ合う部品も、表面にはられたエンジンオイルの粘度によって、かかる抵抗が変わってきます。

 

必要以上に高い粘度のエンジンオイルを使用すると、エンジンが動くときの抵抗が強くなってしまい、エンジンが自分自身を動かすために力をたくさん使ってしまうことになり、車を動かすための力が弱くなってしまいます。

 

力が弱くなってしまった分、車を動かす力を増やそうと、ドライバーはアクセルを多く踏んでしまい、燃料を多く使用してしまい、燃費が悪化してしまうのです。

 

ですので、エンジンオイルの粘度は、高すぎても、低すぎてもよくありません。

 

エンジン内の部品どうしを、直接触れさせないような厚みの油膜をはり、擦れ合う部品を抵抗なく滑らせてくれる、適切な粘度のオイルを使うことが大切になります。

 

自動車メーカーでは、様々な使用条件と、メーカー保証の期間の兼ね合いから、どんな粘度のオイルを、どのくらいの期間で交換したらいいのか、定めています。

 

ですので、新車から保証期間内の車であれば、基本的には車のメーカー指定粘度のオイルが、その車のエンジンにとって適切なオイルということになりますので、メーカー指定の粘度のオイルを使用するようにしましょう。

 

自分の車の適切な粘度がわからない方は、その車の取り扱い説明書をご覧ください。中古車を購入した方で、取り扱い説明書をお持ちでない方は、ディーラーか、カー用品店、または車を買った販売店、メーカーのサイトなどでも確認できる場合もあります。

 

 

適切な粘度はメーカー指定粘度で間違いないか

 

車のメーカーが保証しているのは、多くても10万km走行、もしくは10年経過までです。もしかすると、もっと長い保証期間の車もあるのかもしれませんが、おおよそその程度の期間です。

 

この保証期間内であれば、メーカー指定の粘度のエンジンオイルが適切な粘度のエンジンオイルということになりますが、メーカー指定の交換スパンを守っていなかったり、車を使用する条件がメーカーの想定を超えている場合には、エンジン内の摩耗具合なども、想定を超えてしまう場合もあります。

 

そもそも、自動車メーカーでは、走行距離や期間でエンジンオイルを交換するように取り扱い説明書に記載して指示していますが、エンジンをかけていても、車を走らせていない時間もありますよね。車を走らせていないのに、エンジンは動いてる状態なわけです。

 

車は停止しているけど、エンジンはかかっているという時間が長い車のエンジンほど、指定された距離よりも早く交換が必要になるとは思いませんか?

 

実際には、エンジンを短時間しか動かさない、いわゆるチョイ乗りが、エンジンオイルにとっては一番ダメージが大きいのですが、話が脱線してしまっているので、この話は別の機会にして話を元に戻しましょうか。

 

メーカーが指定している距離や期間でオイルを交換していても、使用条件によってはエンジンオイルやエンジンに想定以上の負荷がかかってしまっている場合があるのです。

 

ですので、同じ車で同じエンジンであっても、全ての人が同じエンジンオイルを使用していれば適切とは限らないのです。

 

もちろん、エンジンが壊れたら乗り換えるから別になんでもいいよ。とか、メーカー保証でどうにでもなるからいいよ。という方は気にする必要はありません。メーカー指定の粘度のエンジンオイルを、メーカー指定の交換サイクルで交換していれば、問題ありません。

 

しかし、保証期間を過ぎてもまだ車を使うかもしれない。中古車を買ったのできちんとメーカー指定の整備がされているかわからない。という方は、指定粘度よりも少しだけ高い粘度のエンジンオイルを使用していたほうが、長持ちするのは間違いありません。

 

ただし、粘度を高くするということは、抵抗が増えるということになります。抵抗が増えると、エンジンが自分自身を動かすために必要な力が多くなってしまうので、車を動かす力が少なくなってしまいます。車を動かす力がドライバーの思っているより弱ければ、ドライバーはアクセルを踏み増ししてより多く燃料を使用してしまいます。

 

つまり、燃費が悪化します。

 

長い間たくさん動いたエンジンや、過酷な使用条件で摩耗したエンジンには、少し粘度の高いエンジンオイルを使用すると、エンジン内部の部品が摩耗してガタがある場合でも、スムーズに動いてくれる場合があります。

 

特に、注意してほしいことは、

 

もしもエンジンが暖まっても、マフラーから白煙が大量に排気されていたり、エンジンオイルの減りが速いという方、エンジンオイルの粘度をワンランク高い(固い)ものに変更してみてください。エンジンの調子が良くなる可能性があります。