エンジンオイルが劣化すると

パワーが落ちる

 

エンジンオイルの粘度が低下してしまうような劣化の仕方だと、エンジンオイルの密閉効果が得にくくなり、出力低下につながります。

 

エンジンが生み出す力は、燃料を燃やした際の爆発の力です。これを受け止める部品とそのまわりの壁のすき間をエンジンオイルでふさいでいます。

 

この密閉効果が、エンジンオイルの粘度の低下によって弱くなっていってしまうことによって、爆発の力がすき間から逃げてしまい、エンジンのパワーダウンにつながります。

 

ほとんどの車には、油圧計などついていないと思いますが、取り付けていれば、粘度が低下してくると、かかる油圧が変化していくことに気が付きます(意識していればですけど)。

 

このようなことからエンジンオイルの劣化による粘度の低下を判断している走り好きの人もいますし、

 

毎日、通勤時に通る坂道で、同じ速度で坂を登った時の、使用しているギア、回転数などから、エンジンオイルの交換前の数日間と交換後の数日間で、出力の違いを感じることもできるかもしれません。(ただし、タイヤの減り具合や暖まり具合、エンジンやミッションの暖まり具合や、気温によってエンジンが出せる出力は変わってきますが)

 

このように、エンジンオイルの劣化によって、粘度が低下し、、密閉効果が弱まることによって、僅かにパワーダウンすることはあります。これによって燃費も僅かに変化しているはずです。(目に見えて大きく変わるほどではないとは思います)

 

 

 

振動や音が大きくなる

 

エンジン音を楽しみながら走っている人や、静粛性の高い高級車に乗っていて、エンジン音が気になる人であれば気付くかもしれません。

 

エンジンがなめらかに回っていた感じがしていたのが、ガサツな回り方になった感じがするとか、アイドリング時の振動が増えたとか、エンジン音がうるさくなったりします。

 

これは、エンジンオイルの緩衝性能や潤滑性能が落ちてきたことによって出る症状です。(長期間放置すると、たとえ劣化していなくてもエンジンをかけた直後のみカムがバルブをたたく音が聞こえる・・・かもしれませんが、そういった音が、エンジンオイルの劣化によって出やすくなる場合があります)

 

粘度の低下によって油膜が薄くなってしまったり、潤滑性能が落ちてきてしまうことによって、エンジン内で触れ合う金属が音や振動を発生しやすくなってしまうということですね。

 

私の場合、平成10年の古い車に乗っているので、エンジンをかけた直後なら聞き取りやすいです。カタカタとエンジンの音が大きくなってきて、振動も増えるので気分的にも良くないので、劣化の判断材料のひとつにしています。

 

ただ、音や振動が少し大きくなってきたからといって、すぐに交換しなくてはいけないわけではありません。静粛性がほしいなら交換した方が快適だとは思いますが、エンジンにとってそんなに大きな問題とはならないでしょう。

 

 

 

エンジンがかかりにくくなる

 

エンジンをかける音で、「キュルキュルキュル・・・ブーン」って音、鳴りますよね?この「キュル」という音、スターター(セルモーター)でクランキング(エンジンをまわす)する音なんですが、その回数が増えてきます。

 

エンジンオイルはエンジンがスムーズに動くための手助けをしていますが、冷えているほど動きに抵抗を及ぼします。冷えている時の抵抗を減らす添加剤が劣化してしまった場合に、抵抗が大きくなりエンジンがかかりにくくなるということですね。

 

スターターをまわす為には、バッテリーの電気を使用しています。エンジンのかかりにくい状態を放置していると、バッテリーの寿命にも影響を与えますので、バッテリーの寿命が気になる方は、このことも覚えておくといいかもしれません。

 

 

 

エンジンオイルの色が変化する

 

エンジンオイルの色は、だんだん黒くなっていきます。

 

エンジンをかけると、燃焼時に発生したガスが、燃焼室の隙間からエンジン内にもれてしまうタイミングがあります。この燃焼時に発生したガスやススが、エンジン内に蓄積されてしまいます。こういったエンジン内の汚れをエンジンオイルは吸収しています。

 

エンジンオイルが汚れを吸収すれば、黒くなります。
ただしこれはごく自然なことで、必要以上に頻繁に交換している場合を除いて、オイルは必ず黒くなっていきますので、色だけで劣化具合を判断することはできません。

 

オイルが黒いということは、汚れを多く取り込んでいるという証拠です。ただし、オイルが黒くなっていないからといって、オイルが劣化していないとは限りません。

 

少々話は逸れますが、私の車は粘度によってはオイルがほとんど変色しません。

 

度重なる洗浄性能の高いエンジンオイル交換によってエンジン内がキレイになり、尚且つ、適度に粘度の高いエンジンオイルを使用することで、エンジン内への燃焼ガスやススのモレを少なく保てているからだと思います。

 

しかし、色が変色していなくても、エンジンオイルを交換すると、性能が改善されるのを感じることができます。つまり、色だけではエンジンオイルの劣化を判断することはできないということを身をもって体験しています。

 

こういったことは、長い間自分でエンジンオイルを変えている人にしかわかりませんが、色が黒くなると、汚れをたくさん取り込んでくれているのだなと思えばいいのです。

 

また、水分を多く含んだオイルは、乳化してしまい、白い固形物が発生します。その場合には、すぐにオイルを交換することをオススメします。(乳化したオイルがどんなものか見てみたい方は、オイルを水と混ぜて一週間ほど放置すれば確認できます)

 

もしも乳化しているオイルから新しいオイルに交換した際は、その次のオイル交換時に、必ずオイルエレメントを交換してください。重大な故障につながる可能性があります。

 

 

更に劣化してくると

 

劣化具合を判断するのはなかなか難しいです。上記のような、パワーダウン、振動、音、色などは、感じ方に個人差もありますし、何より、感覚的なものが多いです。

 

また、使用条件によってどの症状が先に出るかといったことも変わってきます。車によっては症状が出ない場合もあります。

 

そして、ここまではおもに、エンジンオイルの劣化によって出る軽い症状でした。この先に書く内容は、ここから更に使用していくと
どうなるのかということについてです。

 

 

マフラーから白煙が出る

 

正常な時でも水蒸気が出ます。寒い日には水蒸気も白く見えますが、エンジンとマフラーが暖まってくると透明になってきます。水蒸気の場合はほとんど臭いもありません。

 

そうではなく、臭いもあり、なかなか消えないのが白煙です。白煙は、エンジンオイルが必要以上に蒸発してしまっている状態です。正常な状態であっても、エンジンオイルはわずかに蒸発していますので、ほんの少しの白煙を気にする必要はありません。

 

しかし、大量に臭いのある白煙が排気されている場合には、気付いた時にはエンジンにとって危険な状態である可能性もあります。

 

白煙の原因は、そのほとんどが、エンジンオイルの燃焼によるものです。
本来、エンジンオイルはピストンという部品を潤滑させていますが、燃料を燃やす燃焼室に、このピストンが面しています。

 

つまり、そのピストンについている分のエンジンオイルは、燃料を燃やした火に晒されているのです。この分のエンジンオイルは蒸発してしまいます。

 

しかし、ピストンとそれを囲むシリンダーの隙間が大きくなってくると、過剰にエンジンオイルが燃やされてしまいます。これが、マフラーから出る白煙の主な原因です。ピストンとシリンダーの隙間が大きくなっていなくても、エンジンオイルの粘度が低くなってくると、同じように、過剰に燃やされます。

 

今までは踏みとどまっていたオイルが、サラサラになってきてしまったせいで、より多く隙間から吹いてしまうために、過剰に燃やされるといった具合にです。

 

 

エンジンオイルが減ってしまう

 

大量の白煙が出るということは、オイルの粘度が著しく低下し、過剰にオイルを燃焼している可能性がありますので、エンジンオイルの量をオイルレベルゲージで確認し、激しく減っているのであれば、交換をおススメします。

 

交換しても、やはり白煙が出るという場合には、すでにエンジン内の部品、シリンダーが削れてしまっているか、オイルの粘度がエンジンにあっていない可能性がありますので、点検してもらうことをおススメします。(シリンダーが削れていても、エンジンオイルの粘度を少し固いものに変更するだけで解決することもあります)

 

 

摩耗した金属粉でエンジンが壊れやすくなっていく

 

燃料と一緒に燃やす空気中に含まれる水分や、燃え残ったガソリンの混入によってエンジンオイルが希釈されることによる粘度の変化によって、油膜が薄くなってしまい、部品同士が直接触れやすくなります。

 

直接触れることで削られた金属粉の量が増えてくることによって、部品の損傷を早めてしまいます。

 

ですが、更に突然、致命的な故障に至るのが、スラッジという汚れがエンジンオイルの流路に詰まる事です。

 

 

エンジンオイルの流れ

 

エンジンオイルは、通常、エンジン下部のオイルパンという部屋に溜まっています。これを、エンジンの回転の力で作動するオイルポンプで吸い上げます。

 

吸い上げられたエンジンオイルは、オイルエレメント(オイルフィルター)というフィルターを通って、様々な経路を通って、エンジン内のオイルが必要な様々な箇所に送られます。

 

 

 

汚れ「スラッジ」による故障

 

この流れの途中にスラッジが詰まってしまうと、オイルが行き渡らなくなり、緩衝効果と潤滑効果を失った金属同士の摩擦によって、溶けてくっついてしまう焼きつきという状態になり、正しく動くことができなくなったエンジンが、自ら自身を破壊してしまうのです。

 

それをなるべく防止するために、まず、オイルパンからオイルポンプで吸い上げるときに、大きな固形物が流路に流れないよう、フィルターを通ります。ここに引っかかった大きな固形物エンジンオイル交換時に排出出来ます。

 

次に、オイルエレメント(オイルフィルター)を通貨します。エンジンオイルの流路に詰まってしまうような小さな固形物はこのオイルエレメントに引っかかります。

 

オイルエレメントそのものが交換可能なので、一般的には、エンジンオイル交換2回に1度の頻度で交換を推奨されています。

 

また、このオイルエレメントが完全に詰まってしまった場合、エンジンが即壊れてしまうのを防ぐため、別の経路を通ってオイルが通過できるようになっていますが、

 

ここまでオイルが劣化しているのに交換しないでいると、エンジンオイルが触れる場所全てにスラッジがこびりつき、何かの拍子にスラッジが剥がれると、一気にエンジンが故障します。

 

壊れ方にもよりますが、車の修理の中でも最も高額なエンジンの乗せ換えか、修理となってしまいます。そうなる前にはエンジンオイルを交換しなくてはいけませんが、上記のパワーダウンや音、振動から、判断し、早めに交換すると、エンジンにとっては優しいオイル交換となります。

 

それがわかれば、メーカー推奨の距離よりも長く使えるオイルもありますし、使用状況によってはメーカー推奨よりも早く交換した方が良い場合も出てくると思います。

 

 

劣化具合の正確な判断はできない

 

エンジンオイルの劣化具合を的確に判断するためには、オイルを検査、分析できる機関にみてもらうしかありません。つまり、一般人が的確にオイルの劣化を判断するのは不可能です。(どうしても検査してみたいという方は、粘度だけであれば、数十万円あれば測定器具が買えます。)

 

 

エンジンオイルが劣化すると・・・まとめ

 

エンジンオイルが劣化すると、次第にパワーが落ちていき、燃費も悪化する。

 

エンジン内の緩衝効果が低下し、振動が増し、それに伴って音も大きくなる。

 

エンジンがかかりにくくなり、バッテリーにかかる負担も増えてしまう場合がある。

 

エンジンオイルが汚れを取り込むことで、色が黒くなる。

 

金属粉がエンジン内部を削っていく。

 

更に劣化していくと

マフラーから白煙がでてくる。

 

エンジンオイルが燃やされ、減ってしまう。

 

スラッジが溜まってしまう→剝がれて経路を塞いでしまうと、エンジンが故障する。

 

 

 

おまけ

 

 

 

エンジンオイルの劣化を判断するためには

 

エンジン音や振動、パワーを気にかける場合は、暖まっているかどうかも同時に判断してください。

 

よくある、オイルを交換した直後に調子がよくなったというのは、交換前のオイルは暖まっていたけど、交換直後でオイルやエンジン内が暖まっていなかっただけということもあります。

 

交換前と同じ条件にならなければ判断できません。

 

また、エンジンオイルの銘柄を変える時も、3回以上同じオイルを試してから判断することをおススメします。

 

エンジンオイルを交換しても、前に入れていたオイルが完全に抜け切ることはないので、前に入れたオイルが残っている状態で新しいオイルを入れることになります。

 

ですので、性能を比較するには、3回程度は同じオイルを使用してみないと判断できないと思った方がいいかもしれません。

 

特に、洗浄性能が高いエンジンオイルを入れた場合には、エンジン内が洗浄され、次にオイルを入れた時に性能が発揮されるような場合には、前に入れたオイルのおかげで調子がよくなっていることも考えられます。

 

 

 

 

自分でオイル交換しているとわかること

 

自分で交換してよくわかるのは、エンジンオイルがどのくらい減ったかどうかや、抜いたオイルの汚れ具合などですが、このような情報を元に、エンジンオイルを選ぶ基準にすることもできます。

 

抜いたオイルが真っ黒だったという場合には、劣化が速くて黒くなってしまったと考える方が多いかもしれません。確かにそのような場合もあるでしょうが、汚れを洗浄する性能が高いオイルだったために汚れを取り込んでオイルが真っ黒になることもあります。

 

実際これはけっこう重要で、私が様々なエンジンオイルを使用してみて、現在使用しているオイルに落ち着いた理由が、はじめに使用している時には抜いたオイルが真っ黒だったのが、同じような使用条件で、飴色にしかならなくなったことです。

 

なので、交換時期は2000㎞以上伸ばしましたが、それでも使い始めのころほど真っ黒にはなりません。

 

もちろん、精密に検査したわけではないので、劣化するまでの期間においては感覚的なものにはなりますが、抜いたオイルの色については、実際に変化がありました。

 

また、私は20Lペール缶でエンジンオイルを買っている(その方が安い)ので、入れるオイルの種類も、4回以上は続けて同じものを使用していますので、以前入れていた別のオイルの効果もほとんど無いと思います。

 

また、抜いたオイルを毎回よく観察すると、細かい金属粉がどの程度含まれているか、ある程度みることもできます。これが多いほどエンジンを削ってしまいます。

 

また、抜いたオイルと入れるオイルの粘度の違いも、見ただけで多少判断できます。抜いたオイルは粘度が下がっている場合が多いです。

 

このようなことを観察しながら、粘度を変えてみたり、銘柄を変えてみて、エンジンの調子を観察していくのは、楽しいものです。

 

ただし、抜いたオイルの処理や、自分で交換するために必要な工具をそろえる必要もあり、費用対効果の面では、得ではありません。