まず、エンジンが暖まるというのはどういうことか

 

 

ピストンとシリンダーの隙間(すきま)

エンジンは、気化させた燃料を燃やして、体積を急激に増やすこと、つまり爆発の力で動きます。爆発の力を、ピストンという部品が受け止め、様々な部品を介してタイヤに伝えます。

 

爆発の力を受け止めたピストンは、シリンダーという部屋の中をスライドするように動きます。スライドするように動く為には、シリンダーと、ピストンの間にわずかな隙間が必要です。

 

隙間がなければ、シリンダーの中を、ピストンが動くことができません。しかし、すき間が大きいと、爆発の力はすき間から漏れてしまうため、大きな力を得ることはできません。

 

ですので、シリンダーとピストンの間の隙間をなるべく狭くする必要がありますが、あまり狭くしてしまうと、引っかかって動くことができなくなってしまいます。

 

また、暖まったり冷えたりすると、膨張したり、収縮したりして、部品間の隙間は変化してしまいます。ですので、エンジンのメーカーは、暖まった状態で、隙間がちょうどよくなるように設計しているのです。

 

 

エンジンオイルの粘度

また、シリンダーとピストンの隙間には、エンジンオイルが供給され、すべりやすくなるようにしつつ、隙間を埋めていますが、エンジンオイルは温度によって粘度、つまり粘り気が変化します。

 

1℃の時と、80℃の時では、粘り気を表す動粘度は、15~20倍ほど違います。(冷えている時の方が粘り気が強いです。)粘り気が強いと、滑りやすくするためのエンジンオイルが、かえって抵抗になってしまいます。

 

つまり、エンジンをかけ始めた時は粘り気の強いエンジンオイルによって抵抗が増えてしまっており、エンジンオイルの温度が上がってくると、粘り気が弱くなり、抵抗が減り、スムーズに動けるようになるというわけです。

 

 

「エンジンが暖まる」とは

エンジンが暖まったというのは、ピストンとシリンダーが暖まり、その隙間が最適な狭さになった状態で、かつ、エンジンオイルの温度も、最適な粘り気になった時のことであり、

 

エンジンが暖まった状態になって、初めて、エンジンが持つ最大出力を発揮することができるようになるということです。

 

暖まっていない段階では、燃料を燃やして得た爆発の力は、隙間からもれたり、エンジンオイルの粘り気による抵抗によって、ある程度損失してしまっているということになります。

 

低燃費のエンジンを作るには、このような損失を減らすことが必要になるので、最近の低燃費車は、エンジンオイルの粘度が低いものでも使用できるように設計したものが増えているのです。

 

 

エンジンが暖まったかどうか判断するには?

エンジン内の部品ごとの温度を測ればいいのです!というのは無理ですので、普通の車で判断できる基準としては、水温計を確認するといいと思います。

 

燃料の燃焼にさらされるシリンダーという部屋の外には、冷却水が流れています。何度も熱せられるシリンダーを冷却するためにです。

 

この冷却水の温度で、シリンダーが暖まったかどうかある程度判断できます。

 

 

水温計がついている車なら、暖まった段階でそれ以上温度が上がらなくなるところがありますので、そこを暖まったと判断できる温度だとしてもいいかもしれません。(これでもまだ完璧に暖まったとは言えない状態である可能性が高いですが)

 

水温表示灯しか付いていない車の場合は、残念ながら判断できません。

 

水温だけで暖まったかどうか判断する場合、エンジンにとって適切な水温は、車種にもよりますが、80~90℃くらいです。

 

水温表示灯は、付いている間は空ぶかしや急加速を控えてくださいというものですが、実際に温度がわかる水温計を取り付けると、40℃などで消えてしまいます。とてもまだまだ暖まったとは言い難い温度です。

 

それでも、エンジンの出力もかなり上がってきている状態ではありますし、ある程度の加速をしても、エンジンへのダメージというころに焦点をあてれば、そこまでダメージはないと思います。

 

ただし、エンジンオイルの温度が水温と同じだと考えても、40℃では、粘り気を表す動粘度はまだ、80℃の時と比べ、3~4倍ほどあります。まだまだ完璧に暖まったとは言い難い温度です。

 

 

純正水温計だけで完璧に暖まったかどうかは判断できません

エンジンの中で循環している冷却水の温度が暖まったからといって、オイルは暖まっていないことがあります。

 

水温の方が、早く上がっていく車が多いように感じます。これは、水温計と油温計の2つを追加で取り付けた車からしか正確には判断できませんが、そのような車を数台みてきた中で、水温の方が暖まるのが遅かった車はありませんでした。

 

例外もあるとは思いますが、一般的な車のエンジンにおいては、エンジンオイルの方が、暖まりにくく、冷めにくいのが一般的だと思います。

 

 

普段からエンジンの調子を意識する

一日以上放置した冷えた状態と、40分以上エンジンをかけっ放しにした(走行してもかまいません)暖まった状態で比較し、

 

加速の仕方やエンジンの音、振動の違いなどを感じることができれば、暖まったか、暖まっていないかある程度判断できるようになるかと思います。

 

ただ、普段からエンジンの調子を意識していないと、なかなか感じることはできないかもしれません。

 

 

もっと的確に判断できる方法は無いのか?

元々付いている水温計や水温ランプはけっこう曖昧だったり、あまり当てにできない車種が多いのです。心配をあおるとのメーカーの考えなのか、このようなエンジンの状態を把握できる情報を示すメーターは、近年どんどん減ってきてしまっています。(スポーツ系の車種には付いている場合もあります)

 

というのも、純正のメーターは、コンピュータ制御で、あえて正確な表示をしないようになっています。何度になったらそれ以上上がらないだとか、そういった特殊な制御になっているのです。

 

このあたりの管理をより詳細に確認するためには、純正品でない水温計や、油温計、油圧計、などといった追加メーターを取り付ける必要があります。

 

 

追加メーターについて

社外品の追加メーターは、実際にセンサーを使って計測した値を表示します。(純正のセンサーで計った温度を読み取るものもありますけどね)

 

追加メーターを取り付けることで、エンジンの状態を常に把握することで、より的確に現在のエンジンやオイル、冷却水の状態を把握することができるようになります。

 

また、自分の車がどのようにして制御されているのかがある程度わかるようになってきます。

 

エンジンオイルを頻繁に交換してエンジンを大事にしたいという方には、おススメです。エンジンが完全に冷えてシリンダーとピストンにすき間が開いている間に、燃焼したガスがすき間から漏れた場合、

 

その燃焼時に燃え残ったガソリンなどが、エンジンオイル内に混入します。これをこのまま放置してしまうようなことを繰り返すと、エンジンオイルはどんどん希釈されて、粘度が落ちてきてしまいます。

 

これを避けるためには、きちんと暖まるまでエンジンを止めないようにする必要があります。きちんと暖まることで、エンジンオイルに含まれてしまったガソリンを、蒸発させることができるからです。

 

完全に暖まったかどうかを判断したいのであれば、追加メーターはとてもおすすめです。

 

一般道路で運用するだけなのであれば、追加メーターを取り付ける必要はありません。水温表示灯が消えたら、ある程度の加速をするような使い方をしても、さほど問題にはならないでしょう。

 

完全に暖まっていない時には、最高出力は出せませんし、燃料の噴射量も多くなってしまっていますが、それなりの加速はできます。

 

普段からエンジンの状態を気にかけたい方や、サーキットを走っている方、またはこれからサーキットを走ろうという方以外には、費用対効果の面で、追加メーターはあまりおすすめできません。

 

また、10万km以上その車に乗り続けたいという人でなければ、エンジンオイルの希釈についてもさほど気にする必要はありません。

 

ただし、エンジンの状態を知り、車を大事に扱いたいということであれば、一度は取り付けてみることをオススメします。一度取り付けてみて、エンジンの状態を管理するようになると、追加メーターを取り付けていない他の車の状態も、わかりやすくなると思います。