タイヤの性能 いいタイヤとは
みなさんが思う、いいタイヤとはどんなものですか?
タイヤは、車と外界をつなぐ唯一のパーツです。私が個人的に思ういいタイヤとは、グリップ力と剛性が高いタイヤです。いざという時にスリップしにくく、スリップしてもコントロールしやすいタイヤがいいと思うからです。
でもそれが正解とは限りません。タイヤの性能はグリップ力や剛性だけではないからです。また、グリップ力と一言で言っても、様々なグリップ力があります。
タイヤの様々な性能について
グリップ力(ドライ)
タイヤの性能を考えた時、真っ先に思い浮かぶのはこれでしょう。乾燥路面でのタイヤと地面の摩擦力のことです。この摩擦力のことをグリップ力と言っています。グリップ力が最低限ないと、タイヤとしては問題です。
進行方向に働く縦グリップ力と、それとは垂直方向に働く横グリップ力があります。(下に紹介している別のグリップ力に関しても同様に、縦と横のグリップ力があります)
グリップ力(ウェット)
濡れた路面上でのグリップ力です。排水性をこのウェットグリップ性能としているメーカーもありますが、厳密には違います。あくまでも濡れた路面でのグリップ力です。
グリップ力(スノー)
雪上でのグリップ力です。冬用タイヤであるスタッドレスタイヤの中でも雪に対して強いのか、氷に対して強いのか、分けて考えているメーカーもあります。
グリップ力(アイス)
氷上でのグリップ力です。雪に限らず、気温の低い時の雨のあとなどの凍結した路面においてはこの性能が大切になってきます。
排水性
タイヤと路面の間にある水を、タイヤの外に排水する性能です。タイヤと地面の間の水を、タイヤの外へ逃がすためには、タイヤに溝がないといけません。
排水性が低いと、ハイドロプレーニング(水の上を滑り、操作不能になる)現象が起きやすくなっていしまいます。
余談ですが、レーシングタイヤの乾燥路面用では、溝が一切ありません。
静粛性
ロードノイズ(路面の凹凸によるタイヤの振動、またはその振動が伝わった足回りやボディの振動によって発生する騒音)をどの程度抑えることができるかという性能です。
最近の、エンジン音の静かな車が走っているのを、車の外にいる人が聞いている音のほとんどはこれです。
対摩耗性
タイヤの減りにくさ、削れにくさです。車を走らせればタイヤは少しずつ削れていきます。
クッション性
段差を乗り越えた時や、凹凸のある道を通過した時の、衝撃を吸収する能力です。
剛性
タイヤに負荷がかかった時の、変形のしにくさです。
この性能が低いと、ハンドルを切った時の応答性が悪くなったりします。
対荷重
重さにどれだけ耐えられるかという性能です。タイヤに入れた空気圧によって対荷重は変化しますが、入れられる空気の量も、タイヤの種類(ロードインデックス)によって変わってきます。
以上に加えて、もう一つ、タイヤの性能としてあるのが、転がり抵抗です。
転がり抵抗とは
タイヤが転がる時に、転がろうとする力を妨げるものが3つあります。
空気抵抗 | どんなものにも空気抵抗はかかります。表面積が大きいタイヤほど、空気抵抗は多くかかります。 |
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地面との摩擦 | 言いかえればグリップ力です。グリップ力の高いタイヤは、地面と擦れて止まろうとする力が大きいので、転がり抵抗は大きくなります。 |
タイヤの変形 |
同じ大きさで、同じ重さのボールが2つあるとします。1つはやわらかく、もう1つは固いとします。同じ勢いで転がした時、どちらのボールが多く転がるでしょうか。
答えは、固いボールです。やわらかいボールは、転がる時に受けたショックを吸収し、熱エネルギーに変換してしまいます。(私が上記に示したタイヤの様々な性能でいうと、剛性に当たります。) |
この3つの転がり抵抗のなかで、車のタイヤの転がり抵抗を最も大きくしてしまうが、タイヤの変形によるものなのです。ですので、タイヤの変形を極力抑えることで、転がり抵抗を大きく減らすことができるというわけです。
最近のエコタイヤでは、グリップ力を落とさず、転がり抵抗を減らす、特殊な材質のタイヤが開発されています。
日本のタイヤの規格を定めている「日本自動車タイヤ協会JATMA」が推進するラベリング制度を導入したタイヤメーカーは、ラベルによってこの転がり抵抗を表示するようになりました。
JATMAのラベリング
転がり抵抗のマークです。 |
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ウェットブレーキ性能のマークです。 |
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低燃費タイヤのマークです。 |
相反するタイヤの性能
実際に売られているタイヤのJATMAのラベリングを見て、よく比較してもわかることなのですが、一般的には、転がり抵抗とウェットブレーキ性能はどちらかの性能を上げてしまうとどちらかの性能が下がってしまいます。
同様にタイヤのドライグリップ力を上げていくと、接地面積の広い、溝のないタイヤになっていきます。溝のないタイヤとは、排水性が無いタイヤということになります。
また、クッション性を良くしていくと、タイヤの剛性がなくなっていきます。タイヤの剛性がないということは、ハンドル操作に対する応答性が悪くなっていきます。
このように、タイヤの性能には、様々なものがあり、どの性能を重視しているタイヤなのかが、タイヤ毎に違います。
タイヤにも得意、不得意があるということです。
様々なタイヤがある中で、自分が求める性能が高いものを選ぶことが大切になります。
最初の話に戻りますが、タイヤには様々な性能があり、どの性能を重視したタイヤなのか、タイヤの銘柄ごとに違ってきます。
ですので、いいタイヤというのは人によって違ってくるため、どんなタイヤがいいタイヤだと断言することはできません。
お客様を乗せて運ぶタクシーであれば、お客様に快適に乗っていただくために、乗り心地を重視したいので、クッション性を重視したタイヤがいいタイヤなのかもしれません。
しかし、クッション性を良くすれば、タイヤの剛性は低くなってしまい、ハンドル操作に対する応答性が悪くなってしまう傾向になります。
安全性を高めようと、グリップ力を重要視したタイヤにすれば、摩擦力が高いことによって、走行音、つまりロードノイズが大きくなってしまうということもあるでしょう。
このように、何かの性能を高くしてしまうと、他の性能が落ちてしまうのがタイヤです。いいタイヤとは、重視したい性能、必要のない性能をよく考えて選んだタイヤのことであると思います。
みなさんはどんな性能を重視しますか?タイヤを選ぶときにはどの性能を重視したいのかを考えて選ぶようにすると、いいタイヤに巡り合えるかもしれません。